子どもたちが自然と親しむことで、郷土を誇りに思い、自然を大切にする心を育てようと開設した、富士市元吉原地区のこどもエコクラブ「元吉原自然学校」を紹介しよう。
元吉原地区は旧東海道と沼川に沿った東西約5Kmの歴史と自然に恵まれた、人口約9千人、3千世帯の穏やかな町である。松並木が続く同地区の鈴川海岸に立つと、田子の浦港東岸から延びた青々とした松林が沼津千本浜まで連なり、晴天時は雄大な富士山が大きく裾を広げ、風向明媚な自然に恵まれた地域であることを実感した。
渡邉友代情報通信員の案内で富士市立元吉原公民館を訪れると、「元吉原自然学校」の校長先生こと同公民館長の渡邉悦男さん、同じく教頭先生こと鈴木和幸さん、そしてその強力な支援母体である「元吉原地区まちづくり推進会」の杉山由隆会長が出迎えてくれた。
元吉原地区は、富士市でも最も少子高齢化が進んでいる地区という。そんな状況に歯止めをかけたいとさまざまな活動に取り組んでいる。その一つとして子どもたちに地域のすばらしさを知ってもらおう、そして大人になって他地区へ出て行っても、また戻ってくる子どもたちを育てたいとの思いから、「元吉原自然学校」を開設したという。
三人は、「子どもたちが大人になってもこの地域に住み続けてくれるには、子どもたちにこの地域の良さ、魅力を知ってもらわなければならない」と、異口同音に話している。
この地区には浮島ヶ原という湿原があり、ここに群生する葦(アシ)に因み、昨年度「海交流2005」事業として地元有志で葦舟づくりに取り組み、地区に大きな反響を呼んだ。特に子どもたちには、改めて地元の自然を見つめ直し、大人たちの行動力に目をみはり、大きな感動を与えたという。
そんな葦舟づくりをきっかけにして、「元吉原の自然と歴史文化を子どもたちに伝えたい」と、「元吉原自然学校」が誕生した。在校生は幼稚園から小学6年生までの子どもたち45人を中心に、大人も含めて75人。学校並みに校長先生をトップに教頭、教務主任、教諭、サポーターで構成され、地域の住民がそれぞれの得意分野を担当している。
平成18年4月29日に開校し、早速鈴川海岸の松林を歩きながら自然観察会が行われた。来年の3月まで、春の浮島ヶ原自然観察会、浜辺の植物観察会、沼川でのカヌー体験、葦笛作りなど、9回のプログラムが予定されている。富士自然観察の会会長の山田高氏が地元の幼稚園長に赴任され、自然観察の強力なアドバイザーとして活躍している。
元吉原地区には自治会をはじめ15の団体がそれぞれの目的を持って活動しているが、「まちづくりは地区全体で取り組まなければならない。個々の組織を飛び越え、互いの力を発揮しなければ地域全体のまちづくりは進まない」と、 同地区連合町内会長も務める杉山さんは力説する。地域の子どもたちを育てるには、大人たちの考えを変え、行動していかなくてはとの熱い思いが伝わってくる。
まちづくり推進会では「潮風と松風が心を揺さぶる歴史ロマンの里」をキャッチフレーズに、「MもTTとよしわら」というカラー版の地区資産マップを作成して地区内外に配布し、地域の現況を知らしめるとともに、豊かな自然と歴史のある元吉原地区の魅力をアッピールしている。
元旦駅伝大会に始まり、どんどん焼き、凧揚げ大会、海岸クリーン作戦、歩け歩け大会など、年間を通じて多くのまちづくり活動を実施しているが、さらに魅力あるものにしようと腐心し、その一つとして「元吉原自然学校」が生まれたのである。自然学校が地域に定着し、自然を愛する子どもたちが増えるとともに、豊かな自然を生かした魅力あるまちにつながっていくことを期待したい。